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野崎先生

シスター ルース 森

野崎先生
  入院をまじかにひかえて休んでいると、おのずと過ぎ来し方のできごとや出会った人々のことが思われます。その1つは、新卒の中学校教師として過ごした数年の思い出です。教材研究に苦しみながらも、同じく新入りの数人の仲間たちと若さを満喫した日々でした。
  責任者の野崎先生や他の先生方の目にあまることも多かったにちがいありません。ある修学旅行で山口市内を見学していたとき、1人の生徒が急性盲腸炎をおこし、緊急に手術が必要になりました。私たち2人の若い女性教師が、手術に立ち会い、その生徒の父兄の到着をまって、後から一行を追いかけることになりました。手術も無事に終わり、生徒を父兄の手にゆだねた私たちは、重い責任から解放され、思いがけない自由な夜を語りあかし、翌日、熊本の水前寺公園で一行に追いつきました。そこで、はじめて重大なミスに気づきました。旅館の支払いを忘れたのです。責任者の野崎先生はただ笑って、必要な手配をして下さったのです。
  半世紀もたった今も、先生の笑顔があたたかく私をつつんで力づけてくれるように感じます。思えば人は、気づくことなく、多くの人々の愛と赦しに包まれているので、生きることができているのでしょう。エーリッヒ・フロム(1900-1980)は「愛とは、もう一人の愛する人を作ることだ」といいました。「父よ、全ての人を1つにして下さい。」と、キリストは父なる神に祈りました。「愛する者になること」が、それを実現するのでしょう。私たちはそれを学びながら生きているのでしょう。