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「書いてくれはった」

シスター ルース 森

「書いてくれはった」
  診察をうける1人のシスターに付きそって、京大病院にいきました。お医者さまからの指示で、シスターがCTをとりに行っているあいだ、診察室のまえの椅子にすわってまっていると、隣にすわっているおばあさんが「いつも来ておられるのですか」と、私に話しかけました。弱々しい小さなおばあさんです。「今日は付きそいで、きているのです」と、こたえると、おばあさんは「先生のいわれることが、私にはむつかしくて、おぼえられないんです。息子たちに伝えなくてはならないのに…」と、心細そうにいわれます。私は思いついて、「先生に書いてもらったらいいですよ。」と、いって、ちょうど持っていた紙と鉛筆をさしだしました。手に持っていた携帯の呼び出しベルが鳴って、足も不自由なおばあさんはウオーカーを押しながら診察室のドアをあけて中に入ろうとしますが、ウオーカーと一緒に自分の身を入れる前に、ドアはすべるように閉じてしまうのです。
  しばらくして、お医者様にドアをささえてもらって、おばあさんが廊下に出てきました。満面に笑みを浮かべて、私に、「書いてくれはった!」と、いいました。本当に嬉しそうです。1つの心配の種がなくなって、元気になられたようでした。こんな美しい笑顔のお年寄りを見たことはないなあと思いながら、私は、「本当によかったですね。」と、心からいったのです。