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「愛は世界の共有である」

シスター ルース 森

「愛は世界の共有である」
  カナダのマザーハウスの下を流れるおおきな河の向こうにハミルトンの町がひろがり、家々のあかりがともると、その夜景のうつくしさは格別です。マザーハウスに滞在していたある夜、思いがけなく、ハミルトンの一つのご家庭の夕食にまねかれました。老夫婦と身障者の息子さんのいる家庭でした。手作りのご馳走のもてなしを受けながら、ご夫婦には東京で働くもう一人の息子さんがおられること、遠い土地で家族からはなれて働いているその息子さんも、日本の人々に暖かく迎えられているようにとせつに願っておられること、その息子さんのおかげで今私がこのご家庭で暖かなもてなしをうけているのだということがわかったのでした。
  ずっと以前のこの出来事をふと思い出して、こころがあつくなったとき、いままでよくわからなかった八木重吉の「愛は世界の共有である/ 神の栄えのために輝く/ 私がしたのでも、他人がしたのでも/ うまれた愛には持ち主は無い」という詩の意味が初めて理解できたようにおもいました。
  私がこれまでに受け、今、げんに、受けており、また、これからもうけるであろう近く遠いたくさんの愛の原因を知ることはできません。一人ひとりの心の愛が遠く近く広がっていくのでしょう。人の大切さが忘れられそうなこのごろだからこそ、私も愛することに倦んではならないとおもうのです。