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霧島つつじ

シスターメリー・パトリシア久野

小学校1、2年の頃、霧島に行った父がそこで見た美しい「霧島つつじ」の小枝を持って帰り「とってもきれいだったんだよ、これがつくといいな」といって庭に挿していました。家族に見せるためもらってきた小枝のようでした。そんなに美しい「霧島つつじ」とはどのようなものかと見るのを楽しみにし、ついてほしいと思っていました。

ある日、もうついたかもしれないと思ってそっと抜いてみました。見ると折れていた枝の先に太く白い大きな芽のようなものが出ていました。「ついた、ついた」と喜んでまた元のように地面に挿しておきました。
それからしばらくして「つかなかったな、枯れてしまった」ととても残念そうに父が言っているのを聞きました。

確かについたのを確認していたので意外に思いましたが、いかにも残念そうな父の姿を見ていると「ついていた」というのも憚られて黙っていました。

後に植物の茎や根の先には生長点というものがあり、それが傷つけられるともう回復しないということを知りました。一度地面から抜いてまた土に挿すという行為はその枝にとって致命傷だったのでしょう。
やっと根が出てきたところを痛めつけられて結局枯れたのでしょう。

このことはずっと忘れていましたが、勤めていた頃、植物の好きな男性の先生と話しているとき、ふと思い出して話しました。
結局、父に言いそびれていたことがどこかで気になっていたのでしょう。
そのことを話すと、その方は「そうか、そうか、ずっと気になっていたんだな」と暖かい笑顔でおっしゃいました。

なんだか父にそう言われたようでほっとしました。
誰かに自分の過ちを打ち明けるのは良いようですね。