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マリア像

シスター ルース 森

マリア像
  北大路通にめんした高野教会の門にたつと、年をへたマリア像に迎えられます。足もとの碑文から、第二次世界大戦中、アメリカ人のうちただ一人日本にとどまって、この教会に幽閉されていたカトリック司祭のパトリック・バーン師を記念するものだと分かります。
  敗戦が告げられて、日本中が途方にくれ、また、占領軍の進駐による混乱と暴行を予想しておびえきっていました。この国を愛し、戦争中も日本にとどまった外国人に、日本人を励まし、アメリカ軍に自重を促してもらえないか、それができるのは国を超えた宗教のカトリック神父しかいないと朝日新聞の若い記者が思いつきました。後にカトリック信徒になった宮本敏行氏です。彼のおかげで、日本人への心からの共感と、アメリカ将兵への信頼に満ちた温かなバーン師の言葉が、敗戦4日目に朝日新聞にのり、また、NHKからじかに、アメリカ本国と上陸寸前の将兵たちに放送されたのでした。バーン師は数年後、韓国で司教になり、朝鮮動乱の折に、多くの司祭や修道者たちとともに共産軍に捕らえられ、死の行進の途中で亡くなったのです。
  さわやかな五月、聖母月のある朝、聖堂から出てくると、花にかこまれたマリア像の前で一人の幼児が遊んでいます。そばの若い父親が、「門のところに来ると、この子はまっすぐにこのマリア像のところに来て、手を合わせ、何か心に感じるものがあるようで、離れたがらないのです。」と言います。1歳半だというこの小さな女の子の「花」という名前が心に残りました。