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先入観

シスターメリー・パトリシア久野

鹿ケ谷に修道院があった頃、夏になると生い茂った雑草を皆で取っていました。

あるとき躑躅(つつじ)の茂みの中で美しいものが目に留まりました。
茂みの間が十センチほどあいていて、そこに緑色のものが見えていたのです。
それは緑色にも紺色にも見え、キラキラと光っていました。
なんだろうと思って顔を近づけて見ましたが、はっきりしません。茂みの中に素手を入れるのも、また皆で草取りをしているときに自分の興味だけで時間を費やすのも躊躇されそのままにして草取りを続けました。

30分ほどして作業が終わったとき、先ほどの美しいものをもう一度見たいと思ってそこに行きました。が、そこにそれはありませんでした。
誰かが何かを見つけたということもなく、全員でただ草を取っていただけでした。
わずか30分ほどの間に無くなったとは‥‥あれは動くもの、生き物だったかもしれない‥‥同じ太さで十センチほどのもの、金属的にキラキラと光るもの、茂みの中にあるもの、と考えていて思い当たったのは蛇の体の一部でした。それに違いないと思ったとき手で触らなくて良かったと思いました。
蛇と知らなければあんなに顔を近づけ、美しいと感動し、しげしげと眺めるのです。
蛇とわかれば悲鳴を上げて逃げたでしょう。

ペトロが祈るために昼の12時ごろ屋上に行った。
天が開け、四隅をつるされて地上に降りる大きな敷布のような容れ物を見た。
そのなかには地上のあらゆる四足や、はうもの、空の鳥などがいた。
‥‥
すると再び声がして「神が清めたものを清くないなどと言ってはならない」と言った。
                                 使徒行録より

本来自然界‥‥神の創造の世界は美しく、調和のとれたものなのでしょう。それを人間の都合で見ていくときバランスを崩し、妙な先入観も出てくるのでしょうね。