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待つ

シスターメリー・パトリシア久野

ある方が2泊の予定で修道院に来られましたが、明日の午後、歯を抜くことになったからと言う理由で、1泊だけでお帰りになりました。

その時、「歯を抜くのはいやだ、痛そうで」と言いながらお帰りになりました。
若くて元気そうな男性なのにと、おかしく思いながら聞いていました。

数日後、その方に会いましたので、「歯を抜いてどうでしたか」と尋ねましたら、「腫れていて、抜くのは無理だったので、明日抜くことになりました。痛そうで抜きたくない」と、顔をしかめておっしゃいました。それを一緒に聞いていた人と「男の人は痛みや傷に弱いのね」と笑いながら帰りました。

さらに数日後、その方に会った時「歯はどうでしたか」と聞きましたら「歯医者さんの親戚の方が亡くなったので4、5日休みになりました。まだ抜いていません。早く抜いて欲しい」とおっしゃいました。

「抜きたくない」から「早く抜いて欲しい」というところまでその方の気持ちが動いてきたことが、おかしくもあり、気の毒にも思いましたが、機が熟すまで待たれる神様の優しさをふと思いました。

   何事にも時があり
   天の下の出来事にはすべて定められた時がある。
   生れる時、死ぬ時
   植える時、植えたものを抜く時
   ‥‥‥‥
   泣く時、笑う時
   歎く時、踊る時
   ‥‥‥‥ 
神のなさることは、すべて時に 適っている。        
               旧約聖書「コヘレトの言葉」3章

きっと感謝のうちに抜歯されたことでしょう。