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五色八重散り椿

シスター ルース 森

五色八重散り椿
  日曜日の朝になると、私は住んでいる修道院から松ヶ崎通りをあるいて、家々の庭木や季節の花々を楽しみながら、北大路にある高野教会のミサにいきます。香りのよいソシンロウバイ、四季咲きの桜、ナンバンギセルもよいですが、特に、心がおどり、立ちどまって眺めずにいられないのは、あるお宅の生垣をこえる木に咲く椿の花です。1本の木に、まっ白な花、濃いピンク、さまざまなピンクの模様がはいる美しい八重の花々が、長いあいだ咲きつぐのです。
  ある朝、道に散った花びらを掃いている住人らしいおばあさんに会いました。「きれいな花ですね。」という私に、おばあさんは微笑みながら、「私がお嫁にきたときから、あったんですよ。でも、他の椿とちがって、花びらがばらばらに散るので、お掃除がたいへんで…」と言います。名前をきくと、ちょっと困った顔になって、「ふだんはすらすらと言えるのだけれど…確か、『五色散り椿』だったと思うけれど…珍しい椿だそうですよ。」と言いました。
  そして、ぐうぜん今日、友人から、白梅町一条通りの地蔵院に「五色散り椿」があって、蕾をたくさんつけていると聞いたので、松ヶ崎通りのおばあさんの「五色散り椿」を見に行きました。まだ固いたくさんの蕾のなかで、1つ、2つが、心なしかふくらんで、白い花びらの先を見せていました。帰る道すがら、その友人の詠んだ「『散椿』散る日のための蕾かな」と云う俳句を思い巡らしていました。