夕映え
夕映え
地下鉄の松ヶ崎駅をでて、南にむかう横断歩道をわたりながら、私はその日の夕映えの空のうつくしさに気づきました。濃く淡い、ピンク色と空色の空が、どこまでもひろがっています。歩道を西に向かってあるいていくと、むこうからやってくる中年の外国人の女性と目があいました。やさしい目をして、頬もこころなしかゆるんでいるようです。「The sky is beautiful ! (空がきれいです。)」すれちがう時、私はおもわずいいました。「I noticed it too.(私も気づいていました。)」という声に振り返ると、彼女も4,5歩向こうで振り返って、ほほえんでいます。私たちは一瞬、黙って、美しいものをみる喜びに、ともに浸っていたようです。「Have a good night ! (よい夜を!)」と、私がいい、「You too ! (あなたも!)」と、彼女が言いました。
彼女は軽装でしたが、旅行中の方だと思います。この出会いは長く私の心にのこって、私自身がアメリカやカナダに滞在したころのことを思い出させ、また、人生はほんとうに旅なのだと感じさせました。人はどこか帰りつくところを求めて旅をするのではないでしょうか。彼女と私が、一瞬、黙って、美しいものをみる喜びに、ともに浸ったなかに、それがあったように思います。それは「愛であり、眞善美である神」といえるように思います。