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天真爛漫

シスタージョアンナ徐

まだそれほど人気(ひとけ)が感じられない土曜日の朝、高野川の流れに耳を傾け、新鮮な空気を心ゆくまで味わっていた矢先のことでした。「シスター、おはようございます。」生き生きした明るい声に驚いて後ろを振り向きました。お会いしてまだ日は浅いのですが出会うたびごとに何故か深い感銘を受ける一人の老婦人だったのです。7時半のミサに間に合うよう自転車のペダルを軽やかに漕ぎながら私の前を通り過ぎていきました。

八十路半ばに近い彼女の老いを感じさせないあのはつらつとしたたたずまいは何だろうと思いつつ前列に座り祈りに集中しました。老婦人もこの聖堂で祈りに加わっています。彼女の美しい姿が視野に入ってきます。張りのある彼女の声も聞こえてきました。

ミサが終わり再度、挨拶を交わした時、こぼれるほどの笑顔とやさしさが返ってきました。周りの方々とも会話を楽しんでいるのです。彼女のちょっとした表情や微笑から人生の辛苦を乗り越えてきた人だけが持つゆとりと暖かさを感じないではいられませんでした。天真爛漫なあの素直さを私も見習いたいと思いつつ帰途につきました。

毎週土曜日、同じ時刻そして同じ道をたどりながらあの弾んだ声と人生の大先輩にまた会えるかと思うと幸せが広がってきます。帰路は車窓から高野川の流れを楽しみ、いつしか「心の清い人々は幸いである、その人たちは神を見る!(マテオ5章8節)」を口ずさみ、新しい週の始まりを心待ちにしている私でした。