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唐崎

シスター ルース 森

唐崎
 年に何度か唐崎へ行く機会がありますが、その楽しみの1つは唐崎神社の前のみたらし団子のお店でひと時を過ごすことです。外国から来たお客のシスターたちを案内して行ったり、若い友人たちとにぎやかに焼きたてのお団子を食べたりするのです。
 また、時には、会議や黙想会の合間に私1人で行くこともあります。そんなとき、長い木のテーブルの周りにおかれた縄の編み椅子の1つにくつろぐ私に、女主人は言葉すくなにお茶をだして、カウンターの向こうで芳しい香りをただよわせながらお団子をやいてくれるのです。
 黙って座っていると、琵琶湖の岸に打ち寄せる波の音が遠くから聞こえてきます。時折、空をとぶ鳶の鋭い鳴き声や明るいこどもたちの声がまじり、また時には、拍手の澄んだ音が響きます。
 小さなお社の後ろに、見事に枝を伸ばした「唐崎の松」のそばの石にきざまれた「唐崎の松は花より朧にて」という芭蕉の句には昔がしのばれ、また、高く低く音をたてて波の打ち寄せる岸辺を歩いていると、古の人々に出会える心地さえして、悠久の自然と時の流れの中にいる自分を静かに感じるのです。