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シスター ルース 森

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 自然が大好きな友人のお陰で、私は京都や滋賀の野山を歩く多くの機会に恵まれました。山の木々、野辺の草花の四季の移ろい。自分もこの自然の一部なのだと感じます。ある時、私が道辺に咲く小さな花を見つけて、何気なく「この花は…ですね。」と花の名を言ったところ、歌人でもあり、書家でもあるその友人が、「名前を言ってしまうと、それ以上、その花を丁寧に見なくなるから、すぐに名前を言ってしまわないほうがよい。」と教えてくれたことを、ずっと心に留めてきました。
 最近、鶏の画家といわれる伊藤若冲(1716-1800)の群鶏図や牡丹図をハイビジョンで紹介するテレビ番組があり、それらの絵が強烈な実在感や生命感をもっているのは、長期にわたる徹底的な観察と、それを表現するあくなき工夫があるからだと知りました。私は自分が自分自身にも他の人にも、日常の出来事にも、自分の経験にも、早急にラベルを付けてしまって、それらが持つ無限の豊かさや深さを見て来なかったことを悔しく思ったのでした。
 また、最近、ティク・ナトゥ・ハンの本の中に「サッチネス(suchnessそうであること)」という言葉を見つけました。「そのものに付随している一面」とでもいう意味でしょうか。自分の好みでない一面にも目をつむらず、拒まず、そのままを受け入れたいと願うこの頃です。