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「音に会いたい」

シスター ルース 森

「音に会いたい」
 先日、NHK第1放送の「音に会いたい」という番組を聴きました。このお正月に夫と共に高千穂神楽を見る旅をした1人の女性の手紙が読まれていて、私は1つの出来事を思い出しました。
 数年前のある昼過ぎに、私は白梅町のバス停でバスを待っていました。制服の中学生らしい男の子が1人私に近づいて来て、「金閣寺へ行くバスはここに止まりますか」と尋ねました。「205番か、204番のバスに乗ればよい」と教えた後も、彼は私の傍に立ったままです。にぎやかに戯れている3人の仲間たちを背後にして、彼の顔は責任感で緊張しているように見えました。彼らは中学2年生で彼はこの班の班長とのことでした。「どこから来たの」と問うと、「高千穂です。ご存知でしょうか、天孫降臨の…」と答える彼の礼儀正しい言葉遣いに、彼の誇りが現れているように感じられました。
 ラジオからは、電車の走る音と、「高千穂!高千穂!」という駅への到着を知らせる放送が聞こえて来ました。高千穂神楽は、33種類ものお神楽で、前晩から元日の昼過ぎにかけて奉納されるとのこと。また、平素は山で樹木の伐採を仕事とするような地元の人々によって、古い時代から延々と継承されてきたものだとラジオは語っていました。
私が出会ったあの班長さんも文化遺産継承の有望な青年として、神楽を舞い始めているのではないかと、楽しく想像したのでした。