再び 樹
「再び 樹」
全校写生大会が植物園で行われた日の朝、1年生の登校に付き添って来た保護者の一人、お父さんが、その日にはこんなことを話しました。
「シスターは先日、私たちを教えて下さったのは23年前の5年生の時だったとおっしゃいましたが、あれは33年前ですよ」
「まあ、そうだったのね。じゃあ、いつかのブログにも間違った年数を書いてるわ。そうだったの」と、再び感慨を深めた私に、彼は次の言葉を続けました。
「そのころの学級通信に『高い樹を見上げるとその上に空が見える』と書いてありました。お好きな言葉だったのですね」
大きな、高い樹が大好きな私は、樹の詩を集めて読ませたり、秋田の森林に関わる民話に触れさせたりしたものです。児童たちへの深い思いをこめて書いた学級通信の一文を、彼は覚えていたのです。当時の学級通信はガリ板を使った手書きのもので、現在の学級から出されている美しい通信とは大違いのものでした。
先日来の雨に洗われた植物園の新緑は見事でした。私は児童たちの姿をカメラに残しながらも、「大きな高い樹」を、園内の各所で見つけては、立ち止まって見上げました。高い樹の上に、空が見えました。でも、その風景は、カメラでは捉えられない心象風景でした。高い空に33年前の5年生の風が吹き渡っていきました。感謝と豊かな気分に満たされて、私は樹を見上げていました。
4月28日
シスターアンミリアム木村