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ほたる

シスターメリー・パトリシア久野

八月、その人の家の前で道路工事があったそうです。

まだ、自動販売機のない頃でした。

灼熱の太陽の下、真っ赤な顔で、汗だくだくになりながら工事をしている人を見て、
その人はヤカン一杯に冷たい水を入れて差し出したそうです。
 
次の朝、その工事の人がたくさんの蛍を入れた虫籠を持ってお礼に来ました。
一日の労働の後、蛍を取りに行ってくれたのでしょう。
 
夜、家中を真っ暗にして蚊帳の中でそれを放すと沢山の蛍が飛び交い、それはそれは見事だったそうです。

炎天下での冷たい水‥‥それを差し出した人の優しさと、それを受けた人の喜びが蛍となって舞ったのでしょう。

蛍の季節になると思い出す話です。

「あなたたちが、私の兄弟姉妹であるこれらの最も小さな人々の一人にしてくれたことは、
 つまり 私にしてくれたことである。」(キリストのお言葉)     
                               マタイ福音書より