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シスターアン・ミリアム木村

「樹」

 1976年度5年生20組の皆さん、いかがお過ごしですか。

 32年前の皆さんの声が、今、私の前にあります。覚えているでしょうか。そうです、1976年11月20日学習発表会、シュプレヒコール「樹」の録音テープです。大切に持っていてくださった方が、私の求めに応じて探し出し、届けてくださったのです。

 あの時、社会科の林業の学習(北山杉の見学を含む)、民話と樹をうたった詩の学習などを総合して構成し、シュプレヒコールの形で発表したのでした。音楽も影絵の効果も皆さんが担当して全員でつくりあげました。私は、皆さんの発声と発音、朗読を可能にする読解指導と、表現読みの練習に、夢中になりました。

 「人がいっぱい入った講堂の一番後ろにまで届く声が、出せるはずです」
 「『さんこ』が叫ぶ<おーい>が山にこだまするように出すのです」
 「一つの声にまとまるようによく耳をすまし、自分の声を合わせるのです」

今のように、すぐれた録音装置もなく、写真一枚残せなかった時代でした。私は舞台のすそにいて小さなテープレコーダーで発表を録音しました。雑音と効果音楽の音でソロの部分は非常に聞きにくいのですが、それでも耳を近づけて聞き取ることができます。練習を重ねた深い声です。張りのある声です。

私がこのテープをもう一度聴いてみたかったのは、今、再び5年生の音読指導に少しだけ関わっているからでした。私の夢は今もかなたの空に輝いています。

32年前の5年生は今も尚、それぞれに、かけがえの無い唯一の樹として成長し続けていることと思います。テープを聴かない時でも、皆さんの声は私の中で響き続けてきました。「葉っぱを落とした裸の樹はいい」とつぶやきながら、はらはらと葉を落としていく桜の樹を見ながら私はバス停へと急ぎます。

2008年12月17日、私たちは、創立の初めに近いころに植えられたメタセコイアの樹に感謝の祈りをささげました。そして18日メタセコイアは伐採されました。新しい「時」に向かう歩みを始めるためです。メタセコイアの種は山の家の植林地に蒔かれ、長い年月の後に又天に高くその枝を伸ばすでしょう。年輪を刻んだ木材は児童たちの手で創造的な造形物として蘇るでしょう。樹はその生命を生き続けるのです。


私たちに永遠の生命を与えるために人となられた神の御子のご誕生を祝うクリスマスが近づいています。

12月19日  シスターアンミリアム