母の祝福
母の祝福
シスタージョアンナ徐
年老いた母が背をかがめ炊飯器の前に立っています。
ふと、平素とは違った雰囲気を母の背に感じました。娘の私が久方ぶりに家族を訪問したというので、母は料理の腕を振るっています。母はしゃもじを右手に何かしています。後方からそのしぐさを注意深く見ていた私の目から涙があふれました。母は炊飯器に向かって十字を切っていたのです。祈る姿は神々しく、この台所兼食堂が聖なる場になっているのを感じました。瞬間、言いようのない幸せを感じたのです。これほどまでに家族のために祈り続け、温かさを感じさせてくれた母! 深い愛と誇りを感じました。神の思いを無言のうちに家族に発信していた彼女は、今も家族にとっては人生の師であり、笑みをたたえた母が恋しく思われます。
いつもそうしてくれていたのでしたが、私たちはそれに気づいていませんでした。母のこの尊いしぐさは多くを語るよりも愛の深さを感じさせてくれ、今も私たちはそれを継承しています。ですから食事はとても大切で、幸せを分かち合う時間でもあります。
母は品位をもって人として生きることの大切さを彼女の生き方を通して教えてくれました。彼女のこの何気ない行為から教えられたことは何と多かったことでしょう。
昔とは違い、家族がともに食卓に向かう時間はなかなか取れませんが、ともに食事のテーブルについた時は先ず、神に感謝を捧げ、食事とともに一日を始めます。修道院でも炊きたてのご飯を前に炊飯器に向かう時はいつでも、母がしたように私も十字を切り、シスター方の幸せと健康を祈ります。