祈り
祈り
はげしかった台風が去り始めた午後、湿気をおびたバッグの重さを手に感じながら、北山通の並木道をかえってきました。路上には激しい風に散らされた銀杏の葉やまだ幼い青い実が、あちこちにちらばっています。
近くの小学校の下校時らしく、色とりどりの雨靴と雨傘の子供たちが、三々五々、横断歩道をわたって、それぞれの方角へ散っていくのが見えます。ふと、近くの1本の銀杏の木の側に1年生ぐらいの小さな女の子たちが2人、並んで立っている姿が目に入りました。2人とも胸の前に小さな手をあわせています。しずかに祈っているようです。私は黙って通り過ぎることができなくて、やがて歩き始めた子供たちに、「お祈りをしていたの?」と、声を掛けました。子どもたちは小さな声で「うん、あそこで雀の赤ちゃんが死んでいたの。」と答えます。「埋めて上げたの。」と、たずねる私に「うん」と、こっくりして、歩いていきました。
嵐のあとの荒々しい景色のなかで、小さな女の子たちのやさしいこころにふれたように感じました。やわらかなひかりにつつまれた女の子たちの後ろ姿が、私の心に今ものこっています。