サンショウウオ(山椒魚)
サンショウウオ(山椒魚)
ある夕方、一人のシスターが外から帰ってきて、修道院のそばの流れに、サンショウウオがいると教えてくれました。急いで見にゆくと、北山通りをくぐって出てくる泉川(いずみがわ)へ、側溝からの水が小さな滝となって流れおちるところに、大きな山椒魚が1匹、赤茶色の体をじっと横たえています。その側に、いつもは人の気配に、すばやく飛び去るコサギが¹1羽、じっと立っています。学校帰りの小学生たちも次々に集まってきて、「山椒魚がいるよ」「山椒魚だ」とにぎやかです。
私は、「山椒魚は悲しんだ。」という言葉で始まる井伏鱒二の「山椒魚」という短編を思い出していました。鱒二は、2年間 閉じこもっていた間に、体が大きくなって谷川の岩屋から出られなくなった山椒魚を、そこはかとない抒情と哀感、そして、ユーモアをこめてえがいています。
今年、このあたりでもおこった集中豪雨で山間の谷川も急流となって、このサンショウウオを街中の流れへと押し流したのでしょうか。自然も人も動物も運命共同体なのだということを改めて思いおこすできごとでした。そして、自分の習性をかえて、じっとサンショウウオに寄りそっているようにみえるコサギ、それらを喜んでみまもる小学生たちのあいだに、あたたかな絆を感じたのでした。