梅の実
実家は誰も住んでいなく空き家になっていますが、時々、風通しに行っています。
観賞されることも無く、枯れてしまった芍薬の傍に梅の木があり、20ほどの大きな実を着けていました。その実を採って帰り、ビンに入れ氷砂糖と酢を加えました。
ぎっしり梅がつまり、酢と氷砂糖をその隙間に入れると、酢は今にも溢れそうになりました。それを台所の隅に置いて毎日眺めていました。
しばらくすると氷砂糖は解け、梅が浮き上がってきました。そして、酢と梅が分かれていてきました。氷砂糖は解け、酢と梅が分かれてきても、ビンから溢れる様子もありませんでした。 「梅が浮いてきた」とみんなで面白がっていました。
さらにしばらくすると、今度は梅が沈み始めました。実には、だんだんしわが出来てきました。一緒にくっついたり、浮いたりしていたのが、少しずつばらばらになって沈み始めました。
あまり科学的な頭脳を持ち合わせていない私達共同体のメンバーは、唯々、不思議がって見ていました。
梅の実の浮き沈みを不思議に思っていたときふと、聖書の言葉を思い出しました。
私が大地を据えた時、お前はどこにいたのか。
お前は海の湧き出るところまで行き着き、深淵の底を行き巡ったことがあるか。
お前は岩場の山羊が子を産む時をしっているか。
月が満ちるのを数え産むべき時を知ることができるか。
天の下にある全てのものは私のものだ。 旧約聖書、ヨブ記
これはヨブが、不幸にあったとき「私は正しい。それなのに、神は私をこのようなひどい目に遭わせられる!」と暗に神を非難していることに対しての神のお答えの一部です。
梅の実の神秘さえ知らない私達が、何と大言壮語することかと思わされます。
一年間、台所の隅に置いていたこの梅酢を皆でいただきました。
ちょっと甘酸っぱくさっぱりしたものに出来上がっていました。