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ボタン

シスター ルース 森

ボタン
  何十年も前、シスターになって初めていただいた仕事は、学校で中高生を教えながら、寄宿生の世話をすることでした。寄宿舎にはボタンという名の小型の犬が飼われていました。連れてきたアメリカ人の司祭が、ボタンのように小さくてかわいいからとこの名をつけたとのことで、濃い茶色のしっぽの長い毛がふわっと体にかかっています。番犬としては小さすぎるのですが、私が授業をしに学校にいくと、私が出てくるまで何時間も玄関で腹ばいになって待っています。寄宿生がいない夏休みには修道院の玄関のまえで私を待ち、また、あるときは奥まった部屋にいる私を見つけて、気がつくと足元にいたりしました。私の気分を反映するようで疎ましく思わせられることもあったのですが、近くへ買い物に連れていくとき、私が持っている紐の中ほどを自分もくわえて、何か楽しそうにリズミカルに歩くようにみえました。
  最近、洛西にある衣笠教会を訪ねたとき、ご近所の方たちが飼っている犬たちを連れてきて談笑しておられましたが、その7,8匹もいるさまざまな種の犬たちのなかの1匹が、まっすぐ私のところへ走ってきて、仰向けに寝転び、相手になって欲しそうでした。
  新米のシスターだった私に余裕がなかったので、私に飼われたボタンは相手になってもらおうと思わず、私を守護することに徹したのかも知れません。