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エスコート

シスタージョアンナ徐

高校生だったころ、父から「話があるからそこに座りなさい」と言われました。
めったにそのようなことがなかったので、心を落ち着かせ父の話しに耳を傾けました。

父は「もうあの大学生と付き合ってはいけない。」と私に話しました。驚いた私は「父さん、どうしてですか? 彼はまじめな青年、教会でいつも勉強を教えてくれ、仲間と色んなことを彼から教わっているの。そしてとても親切で楽しい。」それでも父は「いけません」と譲らないのです。

父はその理由をゆっくり説明してくれました。ある時、私が彼と一緒に歩いているのを見かけたようです。「彼はお前に歩道の車道側を歩かせ、彼自身は内側を歩いていた」と言うことでした。「彼は高校生のお前に対する配慮が足りない。先輩としてお前をエスコート(相手を守り気遣う・あるいは護衛する)しなければならない」ということでした。父はいつでもお年寄りの方や母そして子供たちを気遣ってくれました。

そのころ、私は両親の細やかな心遣いに気づいていない小生意気な高校生でした。久方ぶりに「エスコート」がきっかけとなって沢山のことを父から学ぶことができました。そのような父がまぶしくさえ感じられたものです。そして、そこまで娘の私を心にかけてくれていたのかと思うと、そのことがうれしく父に対する尊敬と感謝の思いが膨らんできました。しかし、そのことが理解できるようになったのは人生のいくつもの坂を越えてからこのことです。

夏になれば父が教えてくれた「エスコート」の意味が懐かしく思い出されます。出会う方々に父から学んだこの心遣いを大切にし、実践したいと思う今日この頃です。