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叱り方と愛のぬくもり

シスタージョアンナ徐

弟が神妙な顔つきで母の前に正座しています。

母は温厚な人で、大声を出したり、感情をむき出しにすることは決してありませんでした。その彼女が、今日は幼い弟に向かって何か神妙な面持ちで話をしています。何事だろうと思って私はその二人に近づきました。度を越したいたずらをしたらしいのです。その場に私も加わり、彼の悪さをいくつか挙げ、幼い弟を窮地に追いやってしまいました。弁明することも出来ず弟は頭を下げ、しょげきっていました。しばらくして彼は母の許しを得ることができました。いつもの元気良さを取り戻し、嬉しそうに友達のもとに走っていきました。母から叱られたことなど微塵も感じさせない天真爛漫な元気のいい弟に戻っていたのです。

私と母だけがその部屋に残りました。一息ついたその時、母は私に向かって話しかけました。「私が叱っているときは、あなたが彼をサポートしてほしかったの。小さい弟が私に怒られ泣いているのに、あなたが追いうちをかけたら、彼は弁明も出来ないでしょ?あなたがそばで彼を庇ってほしかったの。」と言いました。今、それを思いますと本当に自分の至らなさが恥ずかしくなります。姉として幼い彼に心から寄り添うことができなかったのですから。

長い人生の坂道を登りながら、その母の温かさと思慮深さに圧倒されます。母の叱り方やちょっとしたしぐさには愛のぬくもり、そして安らぎが見え隠れしていました。

カトリック教会では11月を死者の月と定めています。すでに旅立って逝った両親を偲び、誰にでも温かさと尊敬をもって接するという遺訓を大切にしたいと心に固く誓いました。