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夫婦の姿  その二 (ちょっと いい話)

シスターメリー・パトリシア久野

昨年 友人のご主人が亡くなりました。

2年半の闘病生活でした。

検査を受けたときには糖尿、高血圧その他、諸々の合併症がすでに発症してい、入退院を繰り返し、食事療法などさまざまなことが試みられたそうです。

「ほとんど物を言わないし何を考えているかわからない。重たい岩のよう、嵩(かさ)高くてうっとうしい。老後は別々のホームに入ってゆっくりするわ」などと言っていた友人ですが電話口で、「元気で強い人が弱って妙に大人しくなるのを見るのは、それはそれでつらいのよ」と涙声になっていました。
そして、毎日の食事、注射などそれはそれは細やかな世話をしていました。

ご主人が亡くなって49日を迎える前に「一度訪ねて来て」と言われ出かけました。

「寝たきりになって、私を呼ぶ回数が多くなったの、でもその時『おい』って言うの、それで『少し伸ばして言って欲しいな』って言ったらしばらく考えてから『ちょっとはどう?』って言ったのよ、それからは用があるとき『ちょっと』と呼ぶようになったの」と嬉しそうに言っていました。

「少し伸ばして言って欲しい」とはどういうことか、とっさにはわからなかったのですが「おい」を「おーい」にして欲しいという頼みをすぐに察したご主人とは、本人が思っている以上に理解しあっているご夫婦だったのだと思いました。

言葉数は少ないご主人だったのでしょうが、ユーモア溢れる友人との生活を楽しんでいらしたに違いないと思いました。

他者と生活するのは難しいものですが、それを越えて互いが近づいたときの喜びは、ひとしお大きいものです。70過ぎても夫婦関係をよりよいものにしようと病の中で絆を深めていったお二人の優しさと、人間の可能性を感じました。

「ちょっと」ではなく、「とても」良いご夫婦の話でしょう?

この話をブログに出すにあたって当人の許可と、添削を願いましたところ次のようなメールが届きました。
「私のことなのね。フッフッフ‥‥。添削なんて‥‥好きに書いて。
亡くなってから、なかなかの大した人物だったんだということがわかった頓馬な女房だったのよ」と。