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「山椒の木  後日談」 (山芍薬)

シスターメリー・パトリシア久野

その後、あるところで見た山芍薬がとても気に入って、大枚をはたいて幾つかの株を買いました。初夏になると真っ白な一重の花が、卵の殻のような形で咲くのを楽しみました。

二年ほどたったころそれが、鉢ごと無くなっていることに気づきました。

誰でもが通る路地だから‥‥とは思っても‥‥‥お隣の鉢の中をじろじろ眺めるようになりました。
今までお隣で芍薬が咲いたことは一度も無かったのですが、二月ごろ お隣の鉢の中で芍薬の小さな芽が出ているのに気づきました。
毎年 地面から芽を出す花は、誰のものとも判別不可能です。

芍薬の芽は日ごとに大きくなっていきます。それにつれ その鉢の前で立ち止まる時間はだんだん長くなっていきました。自分の鉢にあった時より大きな芽になっているのだから、きっと手入れがいいのだし花にとってはお隣のほうが良いのかもしれない‥‥と思っても釈然としません。やがて蕾もつき始めました。

ところがある日、ふと思いました。「あの蕾のつき方、葉の出方、枝の分かれ方は、山芍薬と違うかもしれない‥‥普通の芍薬かもしれない」と。

しばらくすると蕾の先が微かにほころび、ピンク色の花びらが見え始めました。
やがて咲いたのはピンク色のごく普通の芍薬だったのです。

「外から人の中に入って人を汚すことの出来るものは何一つ無い。人の中から出てくるものが人を汚すのである」     マルコ福音書より

自分のが無くなっていることに気づいてからの半年近くのことを思うとき、このイエス様の言葉がいつも思い出されるようになりました。

闇は自分の心の中にあるのです。