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ヴェールを通して  その三  手紙

シスターメリー・パトリシア久野

 十数年前、修道誓願25周年を記念してローマで刷新を兼ねた集いがありました。

一月ほどあったその集いの間のある日 郊外にある聖パウロ教会に一人で出かけました。
大きな教会内のあちこちで祈っている人が沢山いました。
イタリア語は全くわかりませんので 教会内をただうろうろしていました。

すると一人の青年が近寄ってきて紙切れを渡そうとしました。
イタリアでは油断しないようにということをいろいろな人から聞いていましたので、何かの押し売りと思い、いらないという身振りをしました。
その青年はちょっと悲しそうな表情をして、身振り手振りで自分のしようとしていることを説明してくれました。
それはこの紙に書いていることを祈って欲しいということでした。
ノートの切れ端のような紙に鉛筆でイタリア語らしきものが書いてありました。
意味がわかったので祈る約束をしてその紙を受け取りました。

十数年前にもらった紙はまだ手元にあります。

そのことをある人に話したところ、その人に「あなたは祈る人と思われたのね」と言われましたが、「私はヴェールを着けていたから」というのがこちらの返事でした。
「ヴェールを着けている‥‥修道女‥‥祈ってくれる‥‥」というようなメッセージをあの青年は受け取ったのではないかと思います。

形が一つのメッセージになったのではないかと思っています。
日本の文化では形も大切にします。形について考えるヒントをもらったように思います。