切り株から
切り株から
先日、京都御苑にある閑院宮邸跡の収納展示物を見学する機会がありました。1室の隅に大きな松の切り株が置かれているのに目が留まりました。なめらかな断面の年輪には日本と御苑の主な歴史が記されており、「阪神淡路大震災、終戦、太平洋戦争勃発、明治維新、安政の大獄、ペリー来航」とたどりながら、時の流れと1つ1つの出来事を身近に感じたのでした。万里小路(までのこうじ)にあって、平成9年5月(1997年)に枯死したこの松は、260年の樹齢で、江戸 寛保元年(1741年)に植えられたものだと推測されていました。8代か9代前の私たちの先祖の誰かが植えたことになります。年輪の幅が一様でないのは、気象や環境の影響を物語っているのでしょう。この松が生きたそれぞれの時代とその環境の変化、そして、その中を生き継いできた多くの人々に思いをはせました。
御苑内の宗像神社には、樹齢600年の楠の木があり、毎年、春から夏にかけて、アオバズクが巣を作って雛を育てます。親鳥は不消化な昆虫の頭や羽を取り除いて雛に与えるので、その食痕を5年間 毎日 拾い集めて、アオバズクの食べ物と御苑の昆虫の種類を研究した記録も展示されています。この地上でそれぞれの場で、一生懸命に生きた人々、生き物や植物、すべてのもののお陰で、この地球はこれほど豊かになっているのだと思います。
アオバズクが巣を作っているという大きな楠の木の下でしばらく5月の風に吹かれて時を過ごして帰って来ました。