散歩
通勤していた頃、早朝「 哲学の道」で時々会う散歩の一組がありました。
それは、おじいさんと、犬と猫の組み合わせでした。
おじいさんはかなり高齢の方で、家族があるのか無いのか、秋が深くなっても、着古したぺらぺらの浴衣を着ていらっしゃいました。
一緒に歩いている犬はおじいさんよりさらに高齢らしく、やせて、毛も抜けて、おじいさんより危なっかしい足取りで、よろよろと歩いていました。
二三歩歩いては立ち止まり、また二三歩進むというように、ゆっくりゆっくり歩いていました。 目も良く見えないらしく、時々木にぶっつかりそうになっていました。
おじいさんと犬は、一歩ずつ互いを確かめ合うように歩いていました。
その傍らに猫が一緒に歩いていました。猫はその二人(?)よりずっと若いらしく、毛並みも美しく生き生きしていましたが、その二人にあわせて、やはりゆっくり歩いていました。猫は紐や鎖で繋がれているわけでもなく、自由な身なのですが二三歩先に行ってもそれ以上は進まず、草や木に顔をつけたり体を擦り付けたりしながら、犬を振り返ったり、犬の歩くのをじっと見守ったりしていました。猫はおじいさんより犬の方を気遣っているように見えました。
この一組を初めて見かけたときは、どういう組み合わせなのか不思議で、一行がそろそろと遠のいて行くのをしばらく見送っていました。
この三者はそれまでずっと、優しくいたわりあいながら生活してきたのでしょう。
あのように高齢になるまで大切にされた犬は‥‥拾ったか、貰われてきたかした心細い仔猫に優しく接していたのでしょう。
お亡くなりになった方々を偲ぶ月‥‥11月‥‥「今頃はきっとあのおじいさんと、あの犬と猫は天国で一緒に幸せに暮らしているでしょう」と言いたくなります。
今迄で見た美しい散歩光景の中の一つです。