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抜け殻

シスターメリー・パトリシア久野

六年生の頃、友人と二人で山に登りました。

特別な目的もなく、ただ 木々を分け入って山に入っていくのが楽しかったのです。
急斜面の鬱蒼とした木々の間を通り抜けると、突然 広く明るい空間が現れました。
そのゴロゴロとした岩地の空間に 初夏の陽が照り付けていました。

二人は突然現れた空間に一瞬とまどい、なんだか妙な感じがし 立ち止まりました。
蝿みたいな沢山の虫が飛び交っていたのです。
しばらく見回しているうちに、そこは蛇の脱皮場らしいと気づきました。
一面に蛇の抜け殻と、脱皮の途中で命尽きたらしい蛇の死骸があったのです。
半分ほど脱皮して死んでいるもの、(脱皮は口のほうからするらしく)透明な脱皮した口の中にわずか2、3センチほど尻尾の先を残したまま死んでいるものなどなど、沢山の蛇の死骸がありました。‥‥100匹はゆうに超えていたでしょう。
二人の足元にも、抜け殻と死骸がありました。
二人は驚きの声をあげ、蛇を踏まないように足を高く上げ 妙な格好でそこを通り過ぎました。

気味の悪いものとしか思っていなかった蛇も、生きるためにあんなに大変な経験をしているのだ。生きている蛇はあんな大変な苦労をして生き延びてきたのだ、と二人の興奮はなかなか収まりませんでした。

いまだに好きにはなれない蛇ですが‥‥好きにはなれなくとも、ひとつひとつのものの抱えている切なさと、命の重さは受け止められるようになれたらいいなと思います。

蛇を見かける季節になりました。