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ある夕方に

シスター ルース 森

ある夕方に
 ある夕方のこと、私は青信号になるのを待って、横断歩道の前に立っていました。「このあたりに○○塾はありませんか。」という幼い声に振り向くと、男の子が私に問いかけています。あたりを見回しても、それらしい建物も看板も見当たりません。私たちは近くの薬屋さんに入って尋ねることにしました。幸い、親切な女主人に心当たりがありました。そこまではかなりの道のりがあり、あたりも薄暗くなって来たので、私は男の子を送って行くことにしました。
 男の子は小学校三年生でした。この小さな私の道連れは、道に面したある小学校の前を通ったときには、「この学校に入れたらよかったんだけど…。でも、僕が一番入りたかったのは○○校で、僕の家の前にあるんだ。」とか、「僕のお姉さんは時々いじわるなんだ。」などと問わず語りにぽつぽつと話し、また、「こっちへ行く用事があったの?」と、私にも気遣いをしてくれます。
 目的地に近づき、看板を見つけると元気になり、「ここだ。」と指差して、上り始めた階段の途中で振り返り、大きな声で「ありがとう。」と言って、また、階段を駆け上がって行きました。私は思わず胸が熱くなりました。