お買いもの
お買いもの
先日、イズミヤの二階にいたとき、小さな女の子に目がとまりました。一人でぶらぶらと歩いてきて、私のそばの棚をながめ、大きな箱を一つとって胸にかかえます。そこへ若い母親らしい女性がやってきて、子供をみて驚いているようです。箱はキティちゃんとおもちゃがつまっている高価なもののようです。「今日はお金がないから買えないよ。それに家におなじようなものがあるでしょう?」とママはやさしくいいますが、女の子は小さな胸からはみだすほどの大きな箱をますますしっかり抱きかかえて、むこうへ行ってしまいます。
「何歳ですか」と、そっと声をかけてしまった私に、「三歳なんです」と、ささやいて、ママは子どものおもちゃがいろいろと飾ってある棚のあいだを見てまわっているようです。やがて、何かよいものが見つかったようで、女の子と箱の交換をしているのが見えました。箱を私のそばの棚へ戻しにきたママに、「上手になさいましたね」と、ねぎらわずにはいられませんでした。ママは微笑みながら、交換した箱を胸にかかえてレジに向かっていく女の子のあとを追いました。
エスカレーターで一階へおりた私は、ちょうどエレベーターでおりてきた母子と、また顔をあわせました。3歳の女の子の目がこれほど輝いているのを私は見たことがありません。「よかったね!うれしいね!」と、私は女の子にいいました。女の子の後ろ姿はまるで踊っているようでした。深く心にのこるお買いものの体験だったに違いないと思いました。