柚子の木
柚子の木
修道院の庭のかたすみに、50センチほどの高さになった柚子の木があります。4年前に植物園で6つの実をつけた鉢植えの木を買ったのです。つぎの年には、たった1つ大きな実をつけました。3年目の去年は、幹にも枝にも数千といえるほどの花をつけ小さな実になったので、摘みとって10数個の実だけをのこしたのでしたが、ひどい夏の暑さと、10日間もの私の留守と水不足のせいか、やっと残った6コの実も黒くなり、小さなままでした。
今年の春、出入りの植木屋さんに、前年この柚子の木が幾千もの花をつけた話をしたところ、「それは木が元気なのではなく、枯れてしまいそうなので、いっしょうけんめい、子孫を残そうとしたのだ。地面に下したら、あるいは元気を取りもどせるかもしれない」と言われたので、急いで庭のすみに植えかえたのでした。お陰でどうにか危機は脱したようで、新しく張った枝の先にいくつかの実がついて、すこしずつ大きくなっていきます。
今年も10日間の留守をし、帰宅して様子を見たところ、枝先がすこし枯れかけたようにみえます。まだ、地中から十分に水分をとれるほど、根が張っていないのでしょう。毎朝のペットボトル1杯の水で、元気をとりもどしたこの木を眺めながら、ふと、この木が1つの象徴、人間関係や思想の継承、また、組織の存続を象徴するかのように思えたのです。