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父の姿  その二

シスターメリー・パトリシア久野

以前「アーモンドの花が咲きました」で紹介したアーモンドの挿し木の親木を見に行きました。そこで満開のアーモンドの木の下で草取りをしていらっしゃる中年の男性に会いました。

その方にこの木について尋ねたところ、次のようなことを話してくださいました。
「グリコの会社がアーモンドチョコレートを発売するに当たって、その記念にアーモンドの種をあげますと新聞に載せていました。そこで申し込んだら三粒 種を送って来ました。それが芽を出してこんなになったのです。今でこそアーモンドの木はあちこちにありますが当時はとても珍しかったのですよ」と。
何年くらい前のことですかと尋ねると、その方は一瞬遠くを眺めるような優しい眼差しになって「もう娘も40はとっくに過ぎたし‥‥40年以上も前ですよ」とのことでした。   そして一枝くださいました。

この木は娘さんとの思い出と結びついている‥‥娘さんと一緒に、植えたり 成長を楽しんだり 初めての花を喜んだりされたのでしょう。「40年以上も前ですよ」とおっしゃったときの遠くを眺めるような優しい眼差しに、娘さんとの幸せな時間を思い出していらっしゃるのを感じました。
この木の周りの草を取ったり、プレートを新しくしたりするとき、それはその方の家族との暖かい絆を再確認する作業になっているのでしょう。

言葉少なく、愛情を表現することが不器用な父親、そしてその父親の深い愛情を感じるのに鈍かった自分のことを思い出しました。

その方から戴いたアーモンドの小枝を部屋に飾ると、部屋がポット明るくなりました。