堀江さん
堀江さん
何十年も前、京都に来てすぐ、堀江さんというおばあさんと知り合いになり、秋晴れのある日、高雄山へ連れて行っていただきました。美しく紅葉する谷へ何枚ものかわらけを投げた後、お弁当に鯖寿司をいただきました。お酢でしめた厚い身の鯖寿司があることを私は初めて知ったのです。
修道院に入ると、修練期の1年は、外部との接触を絶って、院内で修練の日々を過ごすのですが、私たちのグループは何かの事情で、週に1度、鹿ケ谷の修道院から野々神町のノートルダム女子大学まで通って、神学の勉強をすることになりました。
そんなある日、出町柳で、バスを乗り換えようとしている私を、堀江さんが偶然見つけ、走り寄って来て、「差し入れた鯖寿司を食べてくれはりましたか。」と尋ねました。修練者への長上の配慮だったのでしょう、お寿司は私の元には届いていませんでした。けれども、堀江さんが私を思い、お寿司を送ってくださった以上、頂いたのと同じことだと思い、本当にありがたく感謝しました。
最近、ミサのとき、ふとこの出来事を思い出しました。そして、この堀江さんの親切が消えることなく私の心に生き続け、私の心を暖め、私の心をやさしくし続けてくれていることに気づきました。聖書の教えどおり、本当に愛は永遠なのだと悟ったのでした。