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語らい

シスター ルース 森

語らい
先日、山際の細い道を歩いているとき、道に両膝と両手をついて、何かに見入っている小さな男の子に出会いました。4歳ぐらいの子で、見入っているのはカマキリのようです。「カマキリだね。」と、私は声を掛けました。「ちょっと生きているんや。」顔も上げないまま男の子は言います。自転車かスクーターに轢かれたのでしょうか。カマキリの足は折れ、お腹の辺りも少し変です。「怪我をしているんだね。」と言うと、「かわいそうや。」と、彼は言いました。自転車が私たちを避けて通って行きます。「向こうの草の陰に置いて上げようよ。」山際の木陰を指して、私は言いました。
触るのが怖いという子に代わって、腰のあたりを持ち上げようとすると、動かなかったカマキリが思いがけなく激しく抵抗して、男の子が近づけた1枚の柿の葉にすがりつきました。男の子は草陰げにその葉をそっと置いて、「もう1枚」と言って、もう1枚、柿の葉を持ってきて、カマキリの上に掛けました。そして、カマキリのいたあたりの道の上の黒糸のような2本の筋をさして、「これが出るとカマキリは死ぬんや。どうにもならんのや。」と言いました。どう言えばよいのか戸惑いながら、「もう行くよ。」と言う私に、男の子は始めて私を見て、かすかに手を振りながら、小さい声で「バイバイ」と言いました。
小さな命に寄り添っている男の子の姿と、彼との語らいが、何日も心に残りました。