沈丁花
沈丁花
卒業の日が近づいた。6年生たちは着実に準備を進めていった。感謝の集い、在校生とのお別れ会など、卒業前のすべての学習や発表会、特別行事を、一つひとつ完成させていった。
卒業式の練習も回をかさねて、その最終回には教職員も参加した。前方をみつめて見事に立ち並んだ6年生の横顔がまぶしい。様々な形で関わり、成長の歩みを導き、見守った日々の、深い思いや喜びが胸に去来する。
卒業式の当日、退場の直前に彼らは後ろの席で見守る保護者や、5年生に向かって立ち、感謝をこめて「旅立ちの歌」を歌う。でも、今日は教職員の方に向きを変えた。「当日はできないから」と、教職員のために歌ってくれる。マイクロフォンの前に立った司会を務める児童の言葉が嗚咽で途切れた。心に深く響く歌声は限りなく美しかった。
校舎の外には午後に日差しが明るく差して、白木れんのつぼみが大きくなり、沈丁花の香りがただよっていた。
3月12日
シスターアンミリアム木村