槿(むくげ)の花が咲く頃となりました。
彼女が小学生の頃、町へ行く途中の家に大きな槿の木がありました。
真っ白い花の中央部が紅紫色でとてもきれいな槿でした。
お母さんの買い物について行く時は、往きも帰りも「きれい きれい」と連発し、「あんな木が家にもあると良いのにね」と言っていました。
ある日、学校から帰って台所に行ってみると、あの槿の大きな枝が水につけてありました。彼女を喜ばせるためにお母さんがもらってきてくれたのです。
ところが、彼女はなんだか寂しい気持ちになったそうです。
台所の隅に置かれた槿は、青空の下で、誇らかに咲いていたあの木とはなんだか違うように見えたのです。
愛 優しさ 善意があっても、ちぐはぐなこと、心の痛むことが起こる‥‥齟齬を来たすことがある‥‥事を体験した最初の出来事だったそうです。
その二
後日、彼女は十歳近く年の離れている妹と話しをしている時、妹もあの家の槿の木が大好きだったと聞き驚きました。
妹はお母さんに頼んで、あの家の人からあの花を一輪いただいてもらったそうです。
その一輪が嬉しくて嬉しくてたまらなかったそうです。
6、7歳の妹があの槿を一輪、大切そうに両手に持っている姿は、想像するだけでも彼女を幸せな気持ちにしました。
姉妹が同じ木を好きになり、それぞれの思い出を持っている‥‥あの木と姉妹の関わりに接したお母さんはどんな思いだったのでしょう。
槿は韓国の国花です。お隣の国、お互いに良さを見、優しい心で関わりたいものですね。