木　陰

その日、私は四ノ宮駅近くの眼科医院へ行くところでした。「コロナ予防のために、待合室で長く待たないように来てください」と言われていたのに、ずいぶん早く四ノ宮駅に着いてしまったのです。すぐに病院へ行くには早すぎます。

適当な時間に病院へ行くために、どこで時間を過ごそうかと思いながら改札口を出ると、思いがけなく、改札口の前には、明るく心地よい庭のような空間が広がっていました。隅の木立や植え込みのあたりにはベンチと腰掛けるのにちょうどよい高さの石のかこみがあり、すこし向こうに座って話しあう女性たちの姿も見えています。私も木々の木陰にある石の１つに座って時を過ごすことにしました。

新緑のさわやかな空気、そよ吹く風、かすかな木の葉のそよぎが、私を心身ともに安らかにしてくれました。そして、ふと、私のように木陰を喜んだ旧約の預言者ヨナ（ﾖﾅ4.6）を思いだしました。忍耐深くヨナを助ける神さまの慈しみ、そして、ユーモアさえ感じられる神さまとヨナとの語らいに力づけられ、明るく爽やかな心で、病院へ向かったのでした。

辞書から、ヨナが休んだトウゴマの種からは、ひまし油がとれ、私も子供の時 飲んだ薬として使われる以外にも、今でもさまざまに使われていることを知って、ヨナの時代をぐっと近く感じたのです。