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言葉その2

シスターメリー・パトリシア久野

その方は社会の第一線で長年活躍した方でしたが病を得、今は歩くのもままならない状態でした。「子供はいない。妻は脳梗塞で意識が戻らないまま6年以上入院生活をしている」と話されました。言葉の端々にお二人の若かりし頃の純な愛を感じました。今は何の反応もない奥さんを月に一度尋ねるのがその方の支えになっているように感じました。
「妻が自分と結婚したことをどう思っているか知りたい」とおっしゃいましたのであなたの方から「あなたと結婚して幸せだった」とおっしゃたらどうですかと勧めました。「耳も聞こえないし何の反応もないので、通じないでしょう」とおっしゃいましたが。聴覚は最後まで働くと聞いたことを思い出し、尚も勧めました。
「病室で二人だけになる機会が無い。」「本当に通じるか確信が無い」。などでなかなか言えないようでしたが5カ月ほどたったころ「やっと言えました。通じたかどうかより、思いがけず私の心が喜びでいっぱいになり涙がこぼれました。」と晴々とした表情でおっしゃいました。

感謝や、愛情の気持ちを口にすると、まず、それを口にした当人が幸せを感じるようです。

「口の言葉が結ぶ実にょって人は善いものを享受する」。旧約聖書箴言13章2節。より。

それからは、毎回そのように言うようになったそうです。