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希望

シスター ルース 森

希 望
  昨日、歯医者さんに行くと、乳母車の赤ちゃんが待合室にいて、じっと私をみつめました。「10か月なんです」と、若いお母さんがやさしく微笑みながら言いました。
  診察台によこになって治療をうけながら、歯科医院には不似合いな赤ちゃんの存在が私を微笑ませていました。そして、赤ちゃんのうつくしく澄んだ目が、3月にロサンジェルスから大阪までの飛行機で隣りあわせた一人の女子高校生を思いださせたのでした。
  彼女はアメリカでの高校生ダンス・コンクールで、6年連続の優勝をとげて帰る大阪の商業高校、約30名のグループのメンバーでした。私のかたいペットボトルの栓をあけてくれるなど、心遣いをしてくれながら、とぎれとぎれに自分のことを話してくれました。外国の高校生はプロポーションがきれいだと思ったこと、構成も振り付けも音楽も自分たちでやったこと、オーディオ担当の仲間のすばらしい技術、高3になるのでクラブのメンバーを辞める寂しさ、将来の夢。私は彼女の話を聞きながら、協力して全力をつくす人たちの美しさ、全ての体験は無駄にはならないこと、「他の人への最善の贈り物はよい思い出だ」というフランスの哲学者マルセルの言葉、心に抱いている望みはやがてよい形で実現してゆくこと、などを話したのでした。
  車いすの私がこの高校生たちのそばを通るとき、彼女は明るくかがやく目で私に挨拶を送ってくれました。私は彼女といっしょに将来への希望を共有しているように感じたのでした。