1. HOME
  2. ニュース
  3. シスターの散歩道
  4. 視 野

ニュース

視 野

シスター ルース 森

視 野
  今朝、ゴミの収集場所に、もう一人のシスターと一緒にゴミの袋をはこびました。収集場所は修道院のそばをながれる泉川にかかる小さな橋の上です。袋に網をかけていると、そのシスターが独り言のように「クレソンかしら?」と、言ったようでした。私が目をあげると2メートル幅の浅く澄んだ流れの端をせっせと啄んでいる鳥のつがいの姿がみえました。「なんという鳥だったかしら?」と、私はつぶやいていました。
  「私はそこに生えている草のことを言ったのよ」と、そのシスターは言いました。立ってみると、私には見えなかったところに、緑の草のおおきな茂みがありました。私の視野には、鳥の姿しかなかったのです。「人は立つところによって、見えるものがこれだけ違うのね。」「人は違うものを見ているのね。」と、私たちは驚きながら、言い合いました。このできごとは私にとって単純で、強烈な体験でしたが、社会の中で人が互いに理解し合って生きるための大切な学びだったと思いました。
  その日、ふと、「青空の鳥にはなれず梅の花」という、友人の俳句がこころにうかんできました。人には限界があるけれども、美しく移りゆく自然のなかで、やさしく人の心に寄りそう豊かさを育てることができるのだと、この句は教えてくれているように感じたのです。