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知足(チソク)

シスター ルース 森

知足(チソク)
  私のすむ修道院に近い北山通りのケヤキの木が色づきはじめ、私は洛西にある竜安寺の木々のみごとな紅葉を思い出しました。このお寺の石庭のすばらしさは有名ですが、私はむしろ方丈の北庭にある「知足の蹲(ツクバイ)」にいつも心がひかれます。共有する「口」部を中心にして時計まわりに「吾唯足知」と並べられ、「口」部にたたえられている清冽な水に「足るを知る」すがすがしさを感じます。
  何年も前、日本で奉仕したアメリカ人のノートルダム シスターが、「インドへ友愛の手を」というインドの貧しい子供たちの教育を支援するプロジェクトを立ち上げ、1000人を超すスポンサーの方々に年に2度ニューズレターを送って近況を知らせていました。ノートルダム女子大学の学生たちに手伝ってもらいながら、私が何年か担当したニューズレターの発送の仕事をやめると告げたとき、シスターは何も言わず、「これまでこの仕事をしてくれて本当にありがとう」とだけ言って、やめることを気持ちよく承知してくれました。
  最近、知足の蹲を思うとき、シスターのさわやかな応答が思いだされ、また、「足るを知る」とは感謝の心を持っていることなのだと思うようになりました。そして、「本当の感謝とは、神と自分をエンジョイすることだ」というある聖人の言葉を味わい深く感じています。