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「今こそ永遠」

シスター ルース 森

「今こそ永遠」
先日、京都新聞の「凡語」で、陶芸家の河井寛次郎の住まいが記念館になって公開されていると知り、訪ねてみたいと思いました。記念館の所在地や電話番号を知ろうと、「いつでもコール」に尋ねましたが分からず、新聞に「山科区」と書いてあったように思い、山科区役所に問い合わせたところ、「調べて、こちらから連絡しましょう」とのことでした。待っている間に思いついて、京都新聞に電話し、教えてもらうことができました。そのとき、所在地は「山科区」でなく、「東山区」だと分かりました。山科区役所にお詫びの電話をしようとしているところに、山科区役所から電話があり、寛次郎記念館の所在地や電話番号だけでなく、行き方まで丁寧に教えてくださったばかりか、私の思い違いには一言も触れられませんでした。
所員の方のやさしさを思いながら、教えられたとおりの道筋をたどり、「いいものを/ ひとの足もとにそうっとおいて/ しらん顔をしていたい」という八木重吉の詩を思い出だしながらやってきた記念館は、人々の日常の営みが感じられる路地の家並みの間に、自然に溶け込んでいて、まるで寛次郎その人に会いに来たような気がしました。
彼が自ら設計した住まいで、彼が作った自在鈎がかかる囲炉裏の傍の木の丸椅子に座り、書斎に置かれた木の大臼に触れ、彼の言葉を焼いた陶器を見、素朴な茶室の脇を通り、登り窯の中を歩いて、ゆっくりとした静かな時間を過ごしました。それは「何という今だ/ 今こそ永遠」という寛次郎の言葉のような1日でした。