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英語との出会い 「卵エピソード 上」

シスタージョアンナ徐

グローバル社会では英語が必須だと多くの人は言います。かつて英語を習いたての中学一年生だった私は思春期の真っ只中、誰しも戦後は貧しかったわけですが、リッチに過ごしたいと精神的なかっこ良さを求めていました。

小学校では担任はほとんど女の先生で全教科を習いましたが、中学生になった途端、教科別で異性の先生に英語を習ったのです。毎日のように、体に不似合いな大きなかばんに英語辞書を入れ、少しばかり大人になった気分の私。英語の先生の授業に惹かれ、予習・復習を欠かしませんでした。更に、習いたての英語を現場で応用させたい想いが募っていました。しかし、田舎に外国の方が来ることは夢のまた夢でした。

でも幼い私の夢を天が聞き届けてくれたのでしょうか。英会話の実現を夢見ていた私に幸運が訪れたのです。毎週、日曜ミサに預かる両親と教会に行くのが楽しみでした。沢山の本を借りることも出来たのですから。 聖堂に入った途端、平素とは違った華やかな雰囲気を感じました。オーストラリアから管区長神父様が視察にいらしたのです。ミサに集中するどころか、夢にまで描いた英会話のチャンスが遂に到来したのですから。「神様ごめんなさい。あなたのことを思わないで」と心で詫びながらミサの間中、神父様と英語で話すことばかり考えていたのです。ミサ終了後、早速、両親を神父様のもとに連れてゆきました。「This is my father and my mother……Nice to meet you !」身振り手振りで一気に習いたての英語を話しました。満面の笑顔を見せながら見上げるほどに背の高い神父様がとびきりやさしく頷いてくれたのです。私の英語が通じたのです!ちょっとばかり偉くなったように思いました。祖母がそばで「よくやったね」とささやいてくれました。

さて、中学生活にも慣れてきたとある日曜日、2歳年下の妹と大事にとっておいたお小遣いを使うチャンスがありました。小学生の妹と私は、教養を積み、沢山の素敵な体験をしようと幼いながらも話し合うことがよくありました。

ついに、少しばかり素敵なレストランに二人で入りました。眺めの良い明るい場所に座を決め行儀よくテーブルに着きました。おいしくて安価、しかも豪華であることが私たちのモットーです。私はメニューを見て、横文字の料理、しかもお小遣いの範囲内の「ボイルドエッグ」を指さし、妹も頷いてくれました。胸をときめかせながら待っていると、注文したボイルドエッグを「どうぞ」と言ってウェイトレスが持ってきました。その「ボイルドエッグ」を見た途端、本当に驚きました。時々食べていたあのゆで卵が、かわいい玉子用スタンドに乗せられテーブルに置かれたのです。妹と私は顔を見合わせました。 数十年過ぎた今も、その時の驚きが鮮明に蘇ってくる懐かしい「卵エピソード第一号」です。英語一年生の初体験でした。