ある祈り
ある先輩のシスターから聞いた話です。
彼女は高校三年の宗教を担当していました。
受験を控えた生徒にとって、直接受験に関係のない「宗教の時間」は、無駄な時間に思えたようでした。
ある時授業に行くと、窓のカーテンを引き、電気を消した教室の中で全員が机にうつぶせになっていました。チョークも黒板拭きもありません。
始業のベルが鳴っても誰も立ちません。
彼女はどうしたものかしばらく思案した結果、生徒一人ずつのため祈ることにしたそうです。そこで、教壇にまっすぐ立ったまま、右端から順に、一人ずつ生徒の名前を心の中で呼びその姿を眺めながら、その生徒のため心から祈りました。そのようにして40数名の生徒一人ずつのために祈ってその一時間を過ごしたそうです。
終わりのベルが鳴った時、うつ伏せになったままの生徒に深々とお辞儀をしてその教室を後にしたそうです。
その一時間の間、顔を上げたり、身動ぎをした生徒は一人も居なかったそうです。
その日の放課後、クラスの代表がそのシスターのところに謝りにきたそうです。
その生徒達は宗教の何たるかを、その時の、そのシスターを通して学んだのではないかと思います。
修道院では毎日、在校生、卒業生をはじめ、三校の関係者の方々のため、皆が祈っています。
もうすぐクリスマス、良い準備ができますように。