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「寂光院参道」におもう

シスター ルース 森

「寂光院参道」におもう

  先日、友人からヒデ・カトウの「寂光院参道」の絵はがきをいただきました。「秋をお楽しみください」という言葉が添えられています。私も何度か大原を歩き、寂光院も訪ねたことがあるのですが、この絵には「秋」という季節以上のものが感じられ、とくに絵の上部の1/3 を占めている紅葉の強烈な明るさに心が惹きつけられたのです。

  寂光院は、源平の戦に敗れ、壇ノ浦で平家一門とともに入水して亡くなった、6歳の安徳天皇の生母、建礼門院徳子が仏門に入り、その安徳天皇と平家一門の人々の菩提を弔って隠棲したお寺です。絵の中央部に細かく刻まれた長い石段と頑丈な何本ものモミジの木の幹が印象的です。権力争いの渦に翻弄された徳子の苦難と悲しみ、そして、葛藤、解脱へと導かれた苦しい道のりを語っているように思えます。そして、頂上のお堂をおおう紅葉はどこまでも広く高く色こく広がり、大原の自然や素朴な村人との交わり、仏の教えや祈りによって救われた徳子の悟りの境地を表しているようです。下部の1/3 を占める清澄なおもむきの低く巾広い石段と、絵全体は、すべての人々をこの悟りの境地へとくりかえし招いているように感じます。キリスト者の私にとっては、自然と人々と神と愛によって1つである境地への招きのように感じられるのです。