道しるべ
多くの画家たちはお生まれになった救い主を訪ねてきた東方の三博士(マテオ2:1-12)を好んで描いてきました。この東方の三博士たちは多くの民族そして人々を代表していると言われています。彼らは星の光を頼りにベトレヘムへの旅路を急ぎました。彼らにとってこの旅路はこれまで体験したことのない未知の世界を目指し、しかもこの旅路が自分との出会い、新しい人生の目標を探るものであったに違いありません。
公現の大祝日の1月5日( 東方の三博士の訪問と礼拝を記念 )、太子道近くの教会でミサに預かることにしました。行き慣れた教会ではありましたが、「今日は新しい道を歩いてみよう」と思ったのです。この計画は私の好奇心をくすぐる楽しいものでした。
地下鉄東西線に乗り、西大路御池で下車して5、6分、いつもとは違う路地裏を歩き出しました。もうそろそろ到着するはずの教会がまだ見つからないのです。次第に焦ってきました。そして必死に歩いている自分を第三者のように観察していました。ハンドバッグを持つ手に力が入り、汗ばんでいます。そして喉が異常に乾いてくるのが意識されました。
ミサの時間がどんどん過ぎてゆきます。新年早々遅刻は禁物!今日は大切な公現祭なのです。焦れば焦るほど、もうどこをどう歩いているのかわからなくなってしまいました。たった7分ぐらいで到着できるはずの距離を30分も歩き続けていたのです。
さまよい歩きながらふと、「そう、人生もこうして模索しながら歩むもの」と自分を慰め、心を落ち着かせました。いつもなら道に迷っても新しい風景や素敵な建物などを見ることができ良かったと思うのですが、今日は聞きたかったお説教が既に終わっているのかと思うと残念でたまりませんでした。
幸いなことに一人の老婦人が通りかかり、彼女自らが教会近くまで案内してくださいました。見慣れた風景を目にしたときは本当にほっとしたものです。完全に教会とは正反対の方向に歩いていたことに気付きました。
この公現祭は、新しい年を歩む私に多くの示唆を与え、意義深い祝祭日となりました。