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「蕾(つぼみ)」

シスター ルース 森

「蕾(つぼみ)」
  昨年の秋、近くの植物園の苗木屋さんで、ほんのりと赤紫の実をつけた苗木の鉢をみつけました。「ツルコケモモ」という名の下に(クランベリー)と書かれています。シリアルの中の赤い干しクランベリーの実やお祝いの食卓にだされるクランベリージェリーが思いだされて、小さな苗木の一鉢を買いました。
  春になって、冬のあいだは紅葉していた枝々がみどりを帯びてきて、枝先にそだった葉群れが伸び、小さな蕾を無数につけましたが、「小さな淡紅色の可憐な花を下向きに咲かせる」という花はなかなか咲きません。日記帳に何度も「蕾」という字を書きながら、「蕾」という漢字はどうして「草かんむり」に「雷」とかくのかしらと不思議に思ったり、「雷がゴロゴロと鳴る音が大好きだ」と話してくれた、私に洗礼を授け、就職先を世話し、修道生活にまで導いてくれた一人のドイツ人神父を懐かしく思いだしたりしたのでした。
  蕾ができたのなら、やがて花が咲き、実がなるのだから、待ちさえすればいいのだと思いさだめて待っているうちに、淡紅色のほっそりとした4枚の花弁を反り返らせて1つ2つと花が咲き始めました。花芯はエキゾチックな赤紫、先端は黄色、将来の実の色を思わせます。小さな「つぼみ」は多くの可能性と希望をひめて活動している「草の雷」なのだと悟りました。そして、一人ひとりに期待と希望をかけて見守っておられる神さまの眼差しを感じたように思いました。