握手
握手
昨年の10月、ベランダの植木鉢に小さなワイルドストロベリーの種を蒔きました。忘れたころになって、土の間から小さな芽が生え、思いがけなくかわいらしい八つ手のような葉が出てきました。三寒四温の季節が過ぎて、春の気配が感じられてくると、この小さな株にも生気がみなぎってきました。
そんなある日、近くの本屋さんの2階へ上がって行ったときのことです。幼い女の子がお母さんに手を引かれてゆっくりと降りて来ました。20センチくらいの高さの階段にやっとつま先を届かせて下りてきます。私と目が合うと、顔をくちゃくちゃにして笑顔になり、手を振りました。そしてその手を私に向かって伸ばします。「握手なんです」とお母さんが言いました。行こうとする私に女の子はまた、笑いかけ、手を振り、手を伸べます。2,3段 上がって振り返ると、彼女はまた笑いかけ、手を振り、手を伸べます。「求めている」とお母さんが困ったようにつぶやきました。「3度も握手を求められるなんてありがたいです。」と言って、歳を尋ねると、もうすぐ1歳半になるとのことでした。小さなやわらかい手の暖かい感触が、今も私の手に残っていて、私の心をやさしくしてくれるようです。
私のワイルドストロベリーの葉は3つに枝分かれして、日に日に育っています。「子供たちを抱き上げ、手を置いて祝福された(マルコ10・13-16)」イエスさまも思い起され、あの幼い女の子もすべての子供たちも健やかで幸せに育って欲しいと願うこのごろです。