ほほえみ
ほほえみ
アメリカでのあるクリスマスに、友人のシスターのオフィスを訪ねたときのことです。
部屋の棚に、寝ているみどり児イエスの小さな像が飾られていました。テラッコッタで、手のひらに握られるほどの小さな像です。見ると、顔は楽しそうに微笑んでいて、今にも声を上げて笑い出しそうです。心を奪われている私を見て、「それはあげられないよ。」と、友人は言いました。
山尾三省は、「わらってわらって」という題の詩の中で、「…わたしたちの いのちの 本当の底は/ わらっているのだと ぼくは思います/ だから おお 遠慮なくぼくたちも/ わらってわらって/ わらってわらって」と書いています。
みどり児イエス像の微笑みは、人の世界を超える神の世界があることを、私に教えてくれているようです。
何ヶ月か後、日本へ帰る私のために、友人のシスターたちがお別れの会を開いてくれました。あのイエス像の持ち主のシスターが小さな箱を、「贈り物よ」と言って私に渡してくれました。あの微笑むみどり児イエス像でした。